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本の要約は著作権違反!?どこまでやっていいのか。

最近、本を要約するYouTubeチャンネルをよく見かけますよね。私も通勤中によく聴いています。読書好きな方でブログ副業とかやっていると自分にも出来そうかな、やってみようかなと思う方もいるかもしれません。そこで、ふと気になるのは著作権て大丈夫なのか?という疑問ですよね。かくいう私もブログに本の書評とか書いてみたいと思うのですが、著者にご迷惑お掛けしてはいけないので調べてみました。その結果を皆様に共有すべく、法学部出身の私がわかりやすく要点だけをまとめます。

 

pile of assorted-title books

そもそも著作権とはなぜ存在するか

著作権法という法律で定められています。法律って、ちゃんと冒頭になぜこの法律があるかが記載されています。

著作権法第一条に以下のようにあります。

この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする

 

誰かが作った文化的に価値のあるものを公正に取り扱って、作った人の権利を守りましょう、そうすれば皆、意欲的に・安心して創作に励むことができ、文化の発展にも寄与するでしょうということですね。

自分が頑張って考えたものを勝手に他の人に使われて、得られたはずの利益を取られてしまったら嫌ですよね。その相手が知名度もあって影響力もある立場であれば尚のこと、何か考えても全部盗まれて、自分が作ったと知られることもなく、好き勝手に利用されるといった事態が起こり得ます。すると、何をやっても無駄なんだと感じ、才能ある人が創作活動をやめてしまうかもしれません。こうなっては国全体として文化の発展が止まってしまうだろうという訳で著作権法が作られたようですね。

著作権の対象となるものは何か

ここについては細かいところへは踏み込まず、単純にいきましょう。

第一条に出てきた著作物には何が含まれるでしょうか。著作権法第二条に「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とあります。

文芸と書いてありますが、今回話題にしている”本”は著作物なのでしょうか。第十条に著作物の例示があり、その中で「小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」と記載されています。ここにも小説や論文が登場するので"本"は著作物なのでしょう。

ちなみに「憲法その他の法律は著作権法の目的となることができない」と第十三条に記載されているので、私がこの記事で著作権法の条文を転載しているのは問題がない訳ですね。

著作者のみが与えられた権利とは

著作権法に反するのは、著作権法で「著作者だけが持っている権利」と定められていることを、著作者でない人が勝手に行ってしまった時です。第二十一条から第二十八条に、著作者の権利として以下のような権利が列記されています。

複製権・上演権及び演奏権・上映権・公衆送信権等・口述権・展示権・頒布権・貸与権・翻訳権、翻案権等・二次的著作物の利用に関する原著作者の権利

 

理解しにくい用語もいくつかありますが、わかりやすい且つ、TouTube・ブログなどのネットで発信する場合に関連してくる権利について説明をします。

公衆送信権等」というのがネット上で発信をする権利になります。著作者以外はネット上で著作物を発信してはいけないのです。

ちょっと内容を変えたり、自分なりに噛み砕いて発信することも注意が必要です。これがまさに本の要約という行為に関わる部分ですが

「翻訳権、翻案権等」で「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」と定められています。

翻訳や変形は何となく意味がわかるとして、翻案とは何なのか。ここが難しいところです。翻案という単語の意味を調べてみますと以下のようにありました。

「既存の事柄の趣旨を生かして作りかえること。特に小説・戯曲などで、原作の内容をもとに改作すること。」

著作物を要約する行為は、趣旨を生かして作り変えたとみなすことが出来そうですね。ごく短い要旨等の抄録は翻案には当たらないという事例もあるようですが、リスクがあることは間違いなさそうです。

著作権法で許されている引用

事案毎の解釈次第でリスクがありそうなことはわかった訳ですが、これなら大丈夫という行為にはどんなものがあるでしょうか。著作権法で認められた行為に引用があります。第三十二条に以下のようにあります。

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

 

また「目的上正当な範囲内で」なんてグレーなことが書いてありますが、過去の判例を基にすると一般的に以下のポイントを抑えていれば引用として認められるようです。

❶引用する必然性がある

❷引用部分が明確になっている

❸自分の著作物と引用する著作物の主従が明確(自分の著作物が主)

❹出所が明示されている

これらの要件を満たして引用する分には著作権法違反にはならないということです。出典を明記しているだけではダメなのですね。

読書感想文や書評は、自分が感じたことや自分の考えを述べることが主の目的(❸)になっていて、感想を述べる上で原文を引用しないと話が通じない(❶)といったように❶・❸の要件を満たしている上で引用部分を明確に(❷)、出典も明記をして(❸)いるから著作権法違反にならないのです。

引用とは言えない。やっぱり本の要約は違法か

あれ?本要約のYouTubeってチャンネル運営者の考えや感想というより、本の内容を淡々と説明していない??そもそも要約してしまっているから原文をそのまま引用しているわけではないよね??引用でないなら、やっぱり著作権侵害なのかー!?という疑問が湧いてきますね。

私も、ここまで法文を読み解いてきた限り、単純な本の要約はアウトと考えます。

本の要約を見たり聴いたりして、内容が理解できれば、消費者は本を買う必要が無くなりますよね。冒頭に著作権法の存在意義を解説した通り「本を書いても要約がネット上に出回って、全然売れない。こんな事なら本を書くのはやめよう」となってしまうと才能ある人の価値ある本が世に出てこなくなる訳です。まさに文化の発展を妨げる行為と言えそうですね。

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本の要約動画・サイトが存在するカラク

しかし事実としてたくさんのネット上にはたくさんの"要約と思われる情報"が存在していて私を含め多くの方に閲覧されています。そこには二つのカラクリがあると考えています。

著作物でない内容(=アイデア)に言及している

著作権法第二条を振り返ってみましょう。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
 
「創作的に表現したもの」とありますね。これまた理解が難しいのですが、思想や感情を自分なりの言葉=表現で伝えようと形にしたものが著作物なんですね。
「よくわからん、逆に何が著作物じゃないと言いたいんだ」といいますと、"何を述べるか"というアイデア自体は著作物ではなく著作権法で保護されるものではないのです。
これでも何を言っているかわかりにくいですね。
再び著作権法の存在意義に戻りますが、目指しているものは「文化の発展」でしたよね。著作物を発表し、その中に散りばめられたアイデアを世に広めて発展することを目指しているのに、「アイデアも著作物なので勝手に使ってはいけません」と言ってしまうと著作物が発表されるほど皆が雁字搦めになって全然世の中が発展していきません
なので"アイデアはみんなのもの"という事で、保護されていないのです。
仮に大発明をして、その自分だけのアイデアを守りたいのであれば、特許法によって扱われる話になります。申請をして保護に値するアイデアか否かを審査され、認められれば守ってもらえます。発表するだけで権利が生じる著作権法とは位置づけが違うのですね。
少し話が逸れましたが、著作物の表現でなく、その中にあるアイデアを抽出して自分の言葉で述べているのであれば著作権侵害にはならないと解釈することは可能というのが一つめのカラクリです。マーケティング手法のようなビジネス書に書かれているノウハウや、偉人が成功するために何をやったという事実などは紹介をしてもしても良いという事になります。
なので要約はビジネス書・論文が多く、小説や映画はほとんど有り得ないのです。過去にYouTubeで映画の要約をするチャンネルに対して有罪判決が出ていましたね。
しかし、表現=著作物かアイデアかを判断するのは簡単ではなく、線引きが難しそうですね。実際には、法律の世界でよく出てくる「総合的に判断する」というやつです。なのでどこまでいってもリスクはあるんですね。
著作者への配慮
こちらは私の個人的な見解にはなりますが、どれだけ著作者に配慮をしているかという点も問題になる/ならないの大きな要素になると考えています。上述の通り、線引きが難しく総合的に判断されるとなれば、著作者から訴えられるかどうか次第みたいなところもある訳です。
いくらアイデアレベルまで噛み砕いていても、自分のアイデアをまるパクリされてお金稼ぎをされていて、自分の本の方は全然売れていないなんてことがあれば、著作者としては面白くないですよね。
なのでしっかりと取り組まれている本要約系のYouTuberさんはチャンネル説明欄に著作者へのリスペクト・配慮をしっかりと記載しており、もし不服があれば連絡くださいというようにされています。
本要約がネット上でバズる事で本の売り上げが上がるといった恩恵受けるケースも、きっとあるのでしょうね。そういったWin-Winの関係の上に成り立っているという見方もあるかもしれません。

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まとめ

詳しく勉強するほど「すごいグレーじゃないか」ということがわかってしまいましたね。今の所はビジネス上のWin-Winな関係もあり文化の発展を妨げる大きな課題となっていないと理解しておくのが良いでしょうか。
しかし、法律が厳格化されたり、YouTube等のプラットフォームの規約変更で一掃されたりするリスクは潜んでいそうです。
私のブログでは読書感想文を書くに留めておこうと思った次第です。皆の権利を尊重しつつ、良いアイデアは広く共有しあって、サラリーマンみんなで一緒に勉強していきたいものですね。

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